映画『レイダース:失われたアーク《聖櫃》』に見るアクション・アドベンチャーの神髄

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はじめに

今回は1981年公開の映画『レイダース:失われたアーク《聖櫃》』について考察してみました。

この映画は、ハリソン・フォード演じるインディ・ジョーンズシリーズの1作目です。

映画的にはアカデミー賞で視覚効果や編集、美術、音響賞を受賞しています。

さて、この記事では映画『レイダース:失われたアーク《聖櫃》』を自分なりにレビュー・解説しています。

独自に『レイダース:失われたアーク《聖櫃》』を考察しているので、この記事と合わせて見てもらえば、より深く作品を味わうことができるでしょう。

この映画は、インディ・ジョーンズによる冒険心溢れるアクション・アドベンチャーになっています。見た後は自分が冒険したかのようにも感じられること請け合いです。

レビュー・解説にあたって

当ブログの映画ページでは、映画の魅力をより伝えられるように、私の視点で映画の中身について語っています。(ネタバレ含みますのでご注意を!)

例えばこのシーンを見ると、より感情的な配慮があったり、技術的に訴えているなどの意味合いなど、細かい部分などにあたります。もし、お手元に映画があるなら一緒に見てもらえると、より分かりやすいと思います。

それでは始めて行きます!

映画の概要

スタッフ/キャスト

  • 監督:スティーヴン・スピルバーグ
  • 脚本:ローレンス・カスダン
  • 出演:ハリソン・フォード、カレン・アレン、ポール・フリーマン
  • 音楽:ジョン・ウィリアムズ
  • 撮影:ダグラス・スローカム
  • 編集:マイケル・カーン
  • 公開:1981年

あらすじ

アメリカの大学で教鞭を取っている、ある考古学博士がいた。

その男は世界を股にかけ、考古学のために遺跡を探求し秘宝を求めていた。

そして、次なる秘宝である『アーク(聖櫃)』を求めて旅立つ。

始めに全てを教えてくれる『レイダース』の冒頭

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『レイダース』は冒頭のシークエンスが最も秀逸に作られています。

それは、インディアナ・ジョーンズの登場シーンから明確にされています。

インディがどういう人物かを、冒頭できちんと説明がなされているからです。

どのような人物かの説明には、ざっと挙げると以下のようなものになってきます。

  • 相手に敬意を払う
  • 考古学的に博識である
  • 遺跡やトラップに手馴れている
  • 危険を予知して行動できる
  • 勇気があり臆病者ではない
  • 人を助けようとする親切心を持っている

そして、性格付けの中には、インディの苦手なものも教えられます。

それは『蛇』であり、インディはこの世で蛇が大嫌いだということが分かります。

インディが蛇が嫌いなことを観客に先に明示させることによって、この映画には、嫌が応にも苦手な蛇が現れることを観客に予感させることになります。

さらに分かることは

  • インディにはライバルがいる
  • 大学で考古学の教授をやっている
  • 大学では生徒たちに愛されている

といった、それなりの人格者であり、敵となる相手がいることも分かります。

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こういった性格付けと人柄が、最初の遺跡から大学で教鞭をとっているシーンまでの、短い間で判明するのです。

主人公であるインディがどういった人物かを明らかにし、観客には、これからの物語を「ぜひ安心して見てもらえるように」と、ここまでで多くの工夫が凝らされているわけです。

また、加えて『レイダース』がどういった物語になるのかも示されます。

『タニス』、『アーク』、『ラーの錫杖飾り』などが説明され、物語のキーワードが全てこの時点で判明します。

その結果、インディの目的も、映画の目的もこの時点ではっきりされるわけです。

あとは、その目的に近づいていくだけの物語になります。

そして、その目的に辿り着かせる前に主人公に幾度も障害を設け、怒涛の展開に次ぐ展開を見せるだけで『レイダース』の物語は完成です。

商業映画として見ても、ふさわしい始め方だと言えます。

アクションとアドベンチャーの真髄みたいな映画

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インディは、火の中、水の中、洞窟の中、蛇の中とあらゆる場所を冒険することになります。

普段の生活上、私たちはインディのような冒険は出来ませんし、遭遇することはありません。

特に、ここまで文明が発達してしまった21世紀では、あらゆることが手に取るように分かるようになってしまい、自ら未開の地に向かおうという気も起きません。

しかし、そんな私たちにも冒険心が心の中にくすぶっているのは間違いありません。

この『レイダース』では、その私たちの冒険心に火を付けてくれる映画です。

インディが恐れることもなく自ら動き、アクションに次ぐアクションを繰り出していく様は、とても私たちを魅了していきます。

『レイダース』は今となっては古い作品ですが、冒険の楽しさや面白さを存分に味わってもらおうという、作り手の強い思いは時代を経ても伝わってきます。

常に先に先に進もうとする物語

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『レイダース』は、どんどん先へ先へと進んでいく物語になっています。

シーンに現れる『何か』が常にフラグ(きっかけ)になっていて、そこから次から次へと展開していく様は秀逸です。

そしてインディは、危険が迫っていてもすぐに突破口を見つけ出し、その状況を攻略していきます。

観客が次に「どうなるんだろう?」と考える暇もなく、グイグイ引っ張って行ってくれるので安心して見ていられます。

少々、無理やりだと感じるシーンもありますが、格闘シーンや銃撃シーン、そしてチェイスシーンなど多彩で、どのシーンも停滞しません。

次々に工夫を盛り込み、観客を飽きさせないように工夫されています。

そして、それはまるで、自分が冒険したかのように錯覚させてくれるから面白いものです。

インディは何を見ている?一瞬の想像

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インディが、カゴに入ったマリオンを見つけようとカメラに向かって走ってきます。

しかし、ただインディがカメラに向かってくるだけでなく、レンズギリギリまで自ら寄ってきます。

つまり、この時のカメラアングルは、目のスーパークローズアップになります。

スーパークローズアップを映すなら、大抵はカメラマンが近づいたり、レンズを望遠にします。

しかし、カメラマンは動かず、インディにレンズまで寄ってきてもらうことでスーパークローズアップを演出しています。

この効果により、スーパークローズアップのインディが驚いて見ているものが何なのか、一瞬ですが、観客は想像させられることになります。

結果的には、カゴを抱えた町の人間たちが多くいるだけですが、マリオンをただ追いかけるだけのアクションシーンにはせず、こういったジョーク的な演出も取り入れているのが秀逸です。

しかも、それを主人公の動きによって成立させているところが、とてもニクイ効果として表れています。

強靭な心を持つインディといっても悲しむ時はある

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ここではマリオンが爆発に巻き込まれてしまった後のショットです。

ベロックに呼び出されたインディは意気消沈しています。

そしてこのショットです。

その表現がとてもうまく表されています。

画面はインディの顔が多く支配していますが、その顔は影で覆われています。

マリオンが亡くなってしまったと思い込み、悲しんでいるという状況だからです。

会話中であるにも関わらず、こうして暗い影で主人公を塗りつぶしてしまうような発想がすごいです。

また、観客には、べロックとインディのどちらにも目線が飛ばせるようにしており、二人の対比を明確に映しています。

まとめ

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レイダースはとても楽しませてくれる作品です。

アクションあり、冒険あり、探求ありと観客の見たいという欲求を全て満たしてくれます。

観客が余計な考えをしなくとも物語がどんどん進んでいきます。

ただ、これは冒頭でのインディの性格を明確にし、また同時に目的も提示しているからこそできる芸当です。

この手法のおかげで、あとは惰性でも楽しむだけで済むからです。

今となっては少々古いですが、古典的名作と言えるのは間違いありません。

映画の基礎が全て入っているように思えます。

脚本、演出、撮影、ビジュアルデザイン、編集など、どこをどう見ても勉強になります。

物語の展開は秀逸で飽きさせないし、ヒーローは不屈で、ヒロインは魅力的。

キャラクター作りも際立っていますね。

映画のお手本と言える作品でしょう。

ただ、エンディングは賛否両論あると思いますね。

最終的には政府の陰謀論的な解釈にしてしまっているので、考古学的な見解が無いのがちょっと残念です。