はじめに
今回から、DJをプレイする上でのキー(Key)を使ったハーモニーミキシングの繋ぎ方について、この記事と合わせて複数の記事で構成していきます。
基本的にはPCDJユーザーを対象にはしていますが、この記事を読めば、どのDJにおいてもテクニックの幅がさらに広がることは間違いなく、基礎的は音楽知識も身につけられるはずです。
ぜひ、お付き合いください。
より高度なDJの繋ぎ方がハーモニーミキシング!!
DJの基本は曲と曲を繋ぐことです。
そして、POPSなどの曲をただ順番に繋ぐだけなら難しいテクニックはいらず、環境があれば比較的誰でもできるものです。
詳しくは以下の記事で
JポップやアニソンDJ初心者必見!これこそ最も簡単な『つなぎ』のテクニックだ!また、TECHNOやHOUSEなどのダンスミュージックを繋ぐのであれば、ビートマッチングというテクニックを修得することでできるようになります。
こちらも以下の記事で
DJにとっても最高に気持ちいい『つなぎ』のテクニックとは?そして、繋ぐ上でさらに高度なテクニックも存在します。
それがキー(調)による繋ぎ方です。
音楽知識がある方ならすぐに分かるものですが、そうではない方には少々難しい類のものになってきます。
このキーによる繋ぎとは、曲と曲の音程が合った上で繋ぐことで、どちらの音にもズレがなく非常に綺麗な繋ぎが可能になるというものです。
そしてこのやり方、すでにあなたが音楽知識を持ち合わせていることと尚且つPCDJユーザーであれば、大きな特権をもたらしてくれます。
なぜならば、どのようなPCDJソフトも最初に曲の解析をすることになるのですが、その解析後のプレイリスト欄には、その曲のキー情報も一緒に載せてくれるようになるからです。(CDJでも上位機種は可能)
これはつまり、キー欄でソートしてしまえば、同じキーの曲だけを集めることも、そのプレイリストすらも作ることが簡単にできてしまいます。
加えて、PCDJの機能としてすごい、というよりズルイのは、もし曲と曲のキーが違っていたとしても、機械的に同じキーに変えてしまうことです。
PCDJさまさまな特権ですね。
「しかし、だとしたら、その機能を使えば何ら問題はないのでは?」とあなたは考えるかもしれません。
ところが、機能的にできるからと言って、それが音楽的に良いかはまた別の話なのです。
機械的にキーを変えるということは、曲の自然な状態を壊してまで音程を著しく変化させることになるので、やりすぎるとヘリウムガスを吸った後の声みたいに聞こえてきます。
当然、そんなの使いたくないですよね?
したがって、この記事ではそのような機械的なキー合わせの話をするつもりはありません。
あくまで、原曲のキーを保ったままの繋ぎ方、ハーモニーミキシングについて考えていこうと思います。
かなりややこしく頭を抱える内容にはなっていきますが、DJというものを抜きにしても音楽知識として有効なのでぜひ覚えてみてください。
音階があればそこにはキー(調)がある
まず、誰でも分かることではありますが、世の中にある、ありとあらゆる曲には基本的に音階があります。
あなたが好きなあの曲も、どこかで聞いたあの曲も、適当に歌った鼻歌でさえも音階を伴っていますよね。
一人一人が個別にドレミファソラシドと歌えば、それが個々の音階になるのです。
そして、その音階はキー(調)として表すことができます。
では反対に、調がない曲というものはないのか?と気になってきますよね?
実はそれがあります。
私は、クラシックに長けているわけではないのであまり語ることはできませんが、オーストリアのアルノルト・シェーンベルクという作曲家が無調の音楽を作ったことで有名です。良かったら探してみてください。
さて、無調の曲というものはありはするものの、音階という音楽にとって最も重要な要素が果たしている役割は絶大に大きく、人々に好まれる曲になるのにも、その表現を追求するためであったとしても、キー(調)は必要不可欠な存在になります。
ハーモニーミキシングはダンスミュージックの方が適してる!
さぁ、音階があればキー(調)があるということが分かりましたが、一旦話をDJ側に戻しましょう。
DJとしては、より曲を綺麗につなぐためにもキーを使った繋ぎ方をしたいということでした。
その上であなたも、Aという曲のキーとBという曲のキーが同じであれば、綺麗に重なることはすでに察しがついていると思います。
もし、これを早速PCDJで試したいと思った方は、ぜひトライしてみてください。
その際、4つ打ちの曲、つまりHOUSEやTECHNO系のダンスミュージックでやってみることをおすすめします。
なぜ、ダンスミュージックにするかという疑問については、その方が分かりやすいからなのですが、詳細は後述します。
もしダンスミュージックをお持ちでなければ、以下の記事を参考にしてみてください。
HOUSE,TECHNO,TRANCEが聞きたい?BEATPORTはそんな四つ打ちが好きになったあなたに最適です!では、早速あなたのPCDJのプレイリストから、4つ打ちで同じキーの曲を2曲探します。
次に、それらの曲をそれぞれのデッキに入れ、BPMとビートを合わせてミックスしていきます。
ここで注意点として、ほとんどのダンスミュージックの場合、イントロとアウトロにはリズムトラックだけが流れるので、できればコードやメロディーが入っている場所にあえて強引に繋いでみることをオススメします。
するとどうでしょう?
驚くほど違和感がないように聞こえるはずです。(ちゃんとBPMとビートは合わせてくださいね)
やった人は分かると思いますが、キー合わせによるハーモニーミキシングは、違う曲とはいえ違和感を最小限に抑えることができ、もっとも綺麗な繋ぎ方が可能になる手法です。
さて、先ほど4つ打ちの方が分かりやすいと書きましたが、もしここで、JPOPなどで試してみたらどうなるでしょう?
おそらくあまり上手くいかないはずです。
なぜなら、今のJPOPの曲はそのほとんどが転調(曲の中でキーを変える)させているため、PCDJソフトのキー表示だけを鵜呑みにしても曲の展開によっては聞いている時々のキーが異なっているのです。
つまり、JPOPでキーを合わせたハーモニーミキシングは実はかなりややこしくなり、ミックスしようとしても上手く合わないこともあります。
この転調については追い追い書いていこうと思いますが、もしJPOPでハーモニーミキシングをしたい場合は、転調していない曲同士を探すか、繋げたい曲がどう転調していくかをあらかじめ研究しておくことが必要になります。
しかし、目的の曲が転調しているかどうかについては、調についての知識がある前提で、ピアノやシンセサイザーなどの鍵盤楽器を用いて音階を把握しないと難しいでしょう。
もし『コードくらいなら分かるぞ』という方であれば、楽器.meというようなサイトで曲の構成を把握することもできますが、これもまた知識があってこそになります。
もし全ての曲が同じキーだったら?
そんなに面倒になるなら、全ての曲のキーが同じだったら?と安易な考えを持ってしまうかもしれません。
仮に本当にそんな夢のような曲ばかりになったら、DJにとってはキーのことなど考えずに超楽で、超気持ちいい繋ぎができ、誰もが万々歳になるでしょう。
しかし、そのようなことには決してなりません。
なぜでしょうか?
それは、キー(調)の選択は作曲者が個々に決めるものであり、違うのが当たり前だからです。
その作曲者にとって作曲する上で好みのキー(調)もあるでしょうし、楽器にとって弾きやすいキーにしている場合もあります。
一方、歌がある曲であれば、歌手にとって歌いやすい範囲のキーに設定し直すこと(移調とも言う)もあります。
また前述した、曲の中でキー(調)を変える転調という技術もクラシックの時代から当たり前のように使われており、複数のキーを用いることで表現の幅をより一層高める役割も担っています。
つまり、十人十色な理由もあれば、楽器としての制限、表現の追求による理由もあるわけで、全ての曲が同じキーになることはありえず、しかもそれをわざわざ求めるような作曲者もいないわけです。
私もDJをやっている時に、この曲とこの曲が同じキーだったら超綺麗に合うんだけどなぁと思うこともあるのですが、それは作曲者からしてみれば「お前に合わせて作ってるんじゃないんだよ!」とお叱りをもらうほどの身勝手な考え方なわけです。
キーの数はどれだけあるの?
上記で試しにミックスしてみた方は分かったとは思いますが、曲Aと曲Bが終始同じキー、そしてその二つの曲のテンポも終始同じで続けば、ほぼ完全に二つの曲は合うことになります。
この『ほぼ』というところは、実は曲の中で臨時記号である♯(シャープ)や♭(フラット)が所々に入ってくると、その部分が不協和音程に聞こえることがあるからです。
しかし、そんな細かいところまで追求していたらやっていられないので、まずは同じキーであれば合うものだと捉えておけば問題ないと思います。(転調していないことが前提ですよ)
ではそのキーですが、一体どれだけの数があるのでしょう?
先に答えを書いてしまうと、キー(調)は全部で24種類あります。
以下にそれらのキーを英語名と共に並べてみました。
- C,D,E,F,G,A,B
- Cm,Dm,Em,Fm,Gm,Am,Bm
- D♭,E♭,G♭(F♯),A♭,B♭
- C♯m,D♯m(E♭m),F♯m,G♯m,B♭m
正直、音楽知識がなければこれらは暗号にしか見えないほどです。
この中で、パッと見で合いそうなのはどれでしょう?と問われて答えたとしても、知識がなければおそらくほとんどが合わせることは不可能でしょう。
CとCmなんかは合いそうじゃん!と思っていたとしても、残念ながらもう全然合わないのです。
つまり、キーを合わせると言っても、結局のところそれなりに音楽理論の基礎知識がないと、合う合わないの判別ができないということです。
しかし、それではこの記事の意味がないので、あえてそこまでは突っ込まずに、出来るだけ簡単な方法で、どのキーとどのキーを合わせると綺麗に聞こえるかだけを次から紹介していきます。(罠ですw)
サークル・オブ・フィフスが答えだ!!
まずはこちらの円をご覧ください。
これは『サークル・オブ・フィフス(5度圏)』というものです。
この円の詳しい説明については長くなるので割愛し、ここではまずこういうものがあるとだけ覚えておいて下さい。
では、円を見ていきましょう。
最初に分かることは、書いてある内容がDJソフトにも表示されるキーが割り振られていることです。
そしてこれが何を表しているかですが、近くにある隣り合ったキー同士は、大体似通ったキーとなっているものなのです。
つまり、CだったらG、Fなどが似ているキーになります。
その理由は、隣り合っているキーのドレミファソラシドという構成音がそれぞれ近いものだからです。
ん?何言っているかちょっと分かんない?
では、具体的に書いていきましょう。
『C』というキーの構成音は『ド,レ,ミ,ファ,ソ,ラ,シ,ド』です。
この『C』を基準に考えて…
右隣の『G』というキーの構成音は『ソ,ラ,シ,ド,レ,ミ,ファ♯,ソ』です。(ファに♯がつきます)
左隣の『F』というキーの構成音は『ファ,ソ,ラ,シ♯,ド,レ,ミ,ファ』です。(シに♯がつきます)
つまり、『F』と『G』は『C』より一つだけ音が違うだけなので、似ている音階とされ違和感が少ないわけです。
同様に、『E』と『B』を見たとしても、これらは一つだけ構成音が違っているものになります。
一方、『C』の下側には『Am』も隣り合っています。
この『Am』というキーの構成音は『ラ,シ,ド,レ,ミ,ファ,ソ,ラ』です。
つまり、『C』と『Am』は全く構成音が同じで、順番が違うだけなのです。(短音階の種類はここでは割愛)
この『C』と『Am』は、それぞれ長調(メジャーキー)と短調(マイナーキー)という分類にはなるのですが、構成音が同じなので、ミックスしても基本的に違和感はありません。
したがって、同じキーはもちろんのこと、この円を見て上と下のキーを合わせれば、ほぼ合うようになっているわけです。
つまり『C』なら『C』と『Am』、『D』なら『D』と『Bm』というわけです。
このように、サークル・オブ・フィフスを利用すると、今プレイしている曲のキーと同じか、隣り合った曲を探せるようになるので、キーによる繋ぎがしやすくなるわけです。
つまり、めんどくさい話は置いておいて、この円の内容を全て覚えてしまえばいいんですね!
なんだ簡単じゃないですか!うん、きっと簡単です!!あなたならすぐに覚えられるでしょう!!
もし覚えられないのであれば、DJ中にこの画像をチラチラ見ながらやるときっと捗ると思いますw
まとめ
いかがでしたでしょうか?
サークルオブフィフスはもう覚えられました?
楽勝でした?それなら良かったです!!
え?もしかしてまだ覚えられていない?
っていうか、こんなの覚えられるわけねーだろ!?ですって!?
仕方がありません。
そんなあなたには、あえていばらの道を通ることになりそうです。
それは、もはやDJとか関係なく音楽理論を学んでいくことです。
理論…、そう、聞いただけでなんか避けたい気分になるアレです。
しかし、DJにとってもDJに関係なくとも、音楽が好きなら音楽理論を学ぶことは損ではありません。
あなたの音楽に対する見識がさらに広がるのは間違いなく、好きな楽曲がもっと身近に感じること請け合いです。
また、理論を知っているだけで少し『通ぶった』態度を示せることもできますw(本気でやらないようにw)
さぁ、それでは、深淵なる音楽の扉を開けていきますか。
次の記事からもぜひお付き合いください。
【音楽基礎知識】DJも知っておいて損なし!! 音階と調について<長音階編>