はじめに
前回に引き続き、DJであっても頭の片隅に入れておいた方が良い音楽知識についてまとめていきます。
もし、初めてこの記事に来られた方は以下の記事もこ覧ください。
DJでもっと綺麗に曲を繋ぐために Keyを使ったハーモニーミキシングに挑戦!前回までの記事で半音、全音、音階、そして調について理解できたかと思います。
そして、鍵盤楽器を扱う際に押す鍵盤からの数え方を知ったことで、『ドレミファソラシド』と同じ響きを作れるようにもなれたかと思います。
また、ハ長調やニ長調という名の『長調』という長音階を紹介したことで、これらも併せて理解されていると嬉しいです。
しかし、音楽を語る上でこの調について大事なことは、全ての音階が長音階で作られているというわけではないことです。
長調の反対とも言ってもいい、短調という響きも存在します。
そして、この短調にも、長調のように決まった音階の数え方があり、その数え方を知ることで、各音階からの響きを作り出すことができるわけです。
ただ、この記事の最後に書いていますが、実は短音階は長音階とは打って変わって音階の種類が増えるものになります。
この音階の種類が増えることは、中々頭を悩ませることにはなりますが、もし、覚えられそうなら、是非頭の片隅にでも留めて置いてほしいと思います。
きっと、音楽への接し方も良い方向に変化したり、音楽全体への愛着もさらに湧いてくるはずです。
『長調(メジャーキー)』があれば『短調(マイナーキー)』がある
ここからは、前回と同じように鍵盤があると捗るので用意してもらえると分かりやすいと思います。
もし無ければ、スマホに鍵盤系のアプリをインストールするか、こちらのサイトを使いながら確認してみてください。
さて、前回は長調を表す長音階を知ることができましたよね?
半音と全音の関係性はもう覚えられましたか?
長音階の音の響きの差は『全音、全音、半音、全音、全音、全音、半音』という関係でしたね。
覚え方は、略して『全、全、半、全、全、全、半』と唱えるだけです。
どこの鍵盤からでもこの音階を使うことで『ドレミファソラシド』と同じ音階になり、その鍵盤の長音階になるわけです。
つまり、低いドから高いドまでは半音を含めると12の鍵盤があるので、長音階は12個作れるということにもなります。
何だかパズルのように面白いものですが、音楽の基礎として重要なことであると分かります。
以下が12の長音階の表です。
さて、この長調、英語名では『メジャーキー』と呼び、その響きは一般的に明るい音階として聞こえるものになっています。
対して、短調(英語名では『マイナーキー』)という調もあり、こちらの響きは暗い音階として聞こえるものになります。
とはいえ、長調が必ずしも明るい曲だけではなかったり、反対に短調も暗い曲ばかりではなかったりするので、この辺りは注意が必要です。
特にJPOPでは、その曲の明るいパートや暗いパートの雰囲気に合わせてそれぞれ調を使い分ける転調(曲の中で調を変えること)を頻繁に行っていたりするので、一概にはどちらかとは言えないところです。
また、作曲者がどのように表現したいかで長調か短調かを選ぶことになるので、世の中にある曲ほとんどが長調だけだったり、短調だけといったことにはならないことも併せて覚えておきましょう。
短調の音階、『短音階』とは?
では、短調(マイナーキー)の説明に入っていきましょう。
ところで、あなたは音楽を聴く中で短調を意識したことがあるでしょうか?
おそらくそのような意識はしていないだろうし、目の前に楽譜や楽器がない限り、長調か短調かの判別など基本的にはできないと思います。
と言いつつ、そのような詮索自体、実は必要ないものでもあったりします。
なぜなら曲を聴いている際に、長調か短調かなんていうものを判断しろなどということはまずないからです。
だから長調か短調かなんてことは気にせずに、ただ音楽を楽しめば良いというのが正直なところではあります。
ただし、長調と同じように、その響きの正体について知っておくこと自体は、あなたにとってプラスになるはずです。
短調という響きがなぜ暗く聞こえてしまうのか、そういった肝心の点に目を向けながら短調の音階を紐解いていきましょう。
ただその前に、短音階自体を知らなければ始まりません。
この短音階の一つは、ハ長調である『ド,レ,ミ,ファ,ソ,ラ,シ,ド』と同じように、白鍵だけで表すことができます。
それは『ラ』から始まり『ラ,シ,ド,レ,ミ,ファ,ソ,ラ』という順番のイ短調です。
では、早速この音階を鍵盤を用いて聞いてもらいたいのですが、何だか長調よりも暗い響きに聞こえるのが分かると思います。
この短音階はあまり慣れていないとちょっと違和感を感じて聞こえてしまいますが、決して間違った音階ではありません。
実は私たちは、知らず知らずのうちに短調が使われた曲をたくさん聞いています。
短音階を紐解こう!
『ラ』から始まるこの短音階は一体どうなっているのか、早速この音階を分解していってみましょう。
音を一つずつ並べてみた『ラ,シ,ド,レ,ミ,ファ,ソ,ラ』の音階の差を数えていきます。
各音の差は『全音、半音、全音、全音、半音、全音、全音』となっていますね。
長音階と同じように、全音5つに半音2つという音の差の数自体は変わってはいません。
しかし、その並び方が異なっています。
長音階は『全音、全音、半音、全音、全音、全音、半音』でしたね。
そして長音階の半音は3番目と7番目に来ていました。
しかし、短音階の半音はこのように2番目と5番目に来ているのが分かります。
これが長音階と短音階の差であり、明るい響きか暗い響きの違いになっているわけです。
こういった差でしかないのに響きが変わるのが実に面白いですよね。
では早速、この短音階もさっさと覚えてしまいましょう。
短音階は『全音、半音、全音、全音、半音、全音、全音』なので『全、半、全、全、半、全、全』と略してしまうのがてっとり早いです。
短音階を各音階にあてはめてみよう!
短音階が分かったところで、これを早速他の音階に当てはめてみましょう。
『全音、半音、全音、全音、半音、全音、全音』の並びをそれぞれの鍵盤から数えていきます。
まずはラの隣の『シ』から始めてみましょうか。
『シ、ド♯、レ、ミ、ファ♯、ソ、ラ、シ』という順番になり、これが『シ』の短音階であるロ短調になります。
長音階とは違うので、半音になる位置に注意してください。
半音の位置は2番目と5番目で、ド♯、レの間、ファ♯、ソの間ですよ〜。
他にもファ♯から始めた短音階である、嬰へ短調の場合は『ファ♯、ソ♯、ラ、シ、ド♯、レ、ミ、ファ♯』となります。
このように各鍵盤から短音階を作れることがこれで分かりますね。
ざっと自然短音階をまとめるとこのようになります。
さて、これで12の短音階も理解できることになりました。
長音階と併せて、メジャーとマイナーの両方の音階が全て出揃ったことになります。
その数なんと合わせて24の音階というわけです。
決して音階だけがその要因というわけではありませんが、この事実を知ると、音楽が無限に作られ続ける理由がなんとなく分かってきますよね。
あなたもこれで大分詳しくなったことで鼻高々ではないでしょうか?
基本的に、DJとしてハーモニーミキシングをするだけであれば、ここまでの内容を知っておけば十分でしょう。
ただせっかくなので、冒頭で伝えたように、短音階には複数の種類があるということも併せて載せておきます。
短音階には3つの種類がある!
上記で覚えてきた短音階ですが、実は1つではなく合わせて3つの種類があります。
長音階が基本的に1種類だったことを考えると、短音階の方がより複雑な音階であると言えますね。
したがって、ここからの短音階はより音楽を学びたい人向けの内容になります。
3つある短音階の種類
- 自然短音階(Natural Minor Scale)
- 和声的短音階(Harmonic Minor Scale)
- 旋律的短音階(Melodic Minor Scale)
上記で記載してきた短音階は、どれも一番上の自然短音階になります。
では、『和声的短音階』と『旋律的短音階』は、『自然短音階』とどのような違いがあるのでしょう?
まず、自然短音階ではこのようになっていました。
これを和声的短音階では、以下の図のように最後の音である第7音、つまり『ソ』を半音上げてしまう(増2度という)のです。
『?』が付く前に、一旦これを長音階に置き換えてみましょう。
長音階であるハ長調の第7音シと第8音ドの差は半音でしたよね?
このおかげにより、ハ長調のシからドへは音が向かいやすくなっているのですが、自然短音階であるイ短調の第7音ソと第8音ラの差は全音になっています。
これの何が問題かというと、和音(コード)を使用した際に聴きやすい進み方(終わった感)があるのですが、それを作るためには、第7音と第8音の差が半音でないといけないのです。
以下のサンプルを聴き比べてみてください。
上記は、第7音を半音上げていないものです。
上記は、第7音を半音上げたものです。
二つのサンプルとも単にコードを鳴らしているだけですが、聴き比べるとほんのわずかな違いとして下側のサンプルの方が終わった感が強く感じると思います。
この違いこそが、和声的短音階が必要な理由になるわけです。
ところが、和声的短音階をそのまま順番に鳴らした音を聞いてみるとどうでしょう?
何だか第6音から第7音の間にすごく違和感を感じますよね?
その理由は、第6音から第7音の音階の階段を通常よりも多く飛ばして上っているからです。
そこで、この違和感を無くすための音階が登場するわけです。
それが、和声的短音階の第7音だけでなく、第6音も半音を上げるようにした『旋律的短音階』と呼ばれる音階です。
このように第7音と第6音も半音上げることで、より音の響きを滑らかにし、歌い手にとって歌いやすくなったわけです。
ただ、この旋律的短音階にはもう一つの特徴があります。
それは、音が上がっていく過程(上行形)では、上記のように第6音と第7音を半音上げるのですが、音が下がっていく過程(下行形)では、第6音と第7音を自然短音階と同じように元に戻すようにすることです。
この辺りはちょっと複雑なイメージを持ってしまいがちですが、追求された音の響きだと考えると、とても面白いとも言えます。
以上、これらが短音階の3つの種類になります。
覚えられそうだったら、ぜひ覚えてみてください。
さてここまで来て、これらの短音階が実際にどのように使われているのか?という問いが出てくるかもしれません。
ただ、その問いに対しては残念ながら明確に答えることは難しいところでしょう。
何せ、こればっかりは作曲者がどのような曲作りを行なったのか、という極めて核心的な部分に繋がるからです。
例えば、コードとの関係性を重視している場合や、どのような響きを聴かせようとしているかなどになってくるはずなので、もしその辺りをどうしても知りたいのであれば、それぞれの曲を細かく分析することになってきます。