はじめに
前回の記事では、DJが同じKeyの曲や『サークル・オブ・フィフス』で隣り合っているKey繋ぐと、とても綺麗にミックスができるよという話でした。
DJでもっと綺麗に曲を繋ぐために Keyを使ったハーモニーミキシングに挑戦!つまり、『サークル・オブ・フィフス』を覚えてしまえば楽勝だよというものだったんですが、そんなに簡単に覚えられるものではないですよね。
もちろん、覚えられなくてもこの『サークル・オブ・フィフス』の画像を見ながらDJプレイすることも一つの手ではあるのですが、どうして『サークル・オブ・フィフス』というものがあるのか、あの意味は何なのかということも気になりますよね?
ですから、DJに関係なく音楽の基礎の基礎から知りたいという方にも向けて、今回は『調』というものについてまとめていこうと思います。
『調』とは『音階』を表し、世界には様々な音階が存在している
さて、前回お伝えしたように、音階がある曲にはKey(調)が存在する一方、調が無い、無調という曲についても併せて紹介しました。
ただ、無調の楽曲は特別なものなので、ここでその話は避けます。
では、Keyの説明に入っていくわけですが、日本の音楽界ではKey=『調』という言葉を使用しているので、ここからは『調』で話を進めていきます。
『調』とは、あなたも聞いたことがある『ハ長調』や『ニ長調』などの言葉のことを指し、音の階段である音階を示すことと、その音階の構成音を表すものになります。
この音階というものは、西洋問わず様々な種類のものが生まれており、その地域における独自の文化を表すための象徴的な存在になっているものも少なくありません。
例えば、日本では沖縄民謡がありますが、この音階は沖縄の文化と密接に繋がってできた音階とも言えるでしょう。
その他にも、日本含めて世界には以下のような音階が存在しています。
- 日本 – 律音階、都節音階
- ハンガリー音階
- スコットランド音階
- アラビア音階
- スペイン音階
- アラブ音階
- インド音階
これら以外で、過去から現代音楽において最も頻繁に使われ馴染みのある音階があります。
それがいわゆる『ドレミファソラシド』という、全音階(西洋音階)です。
この全音階は、音階上の響きを7つに分けることで、多種多様な音階を作ることが可能になります。
言ってしまえばこの全音階を学んでおけば、他の音階についても比較的分かりやすく学ぶことができるわけです。
あなたがもし他の音階について興味を持ったのなら、ぜひその文化と共にあなた自身で学んでいってほしいと思います。
『ドレミファソラシド』という音の響き
それでは誰もがイメージができる音階、ドレミファソラシドを紐解いていきましょう。
このドレミファソラシドを語っていく上で大事なことが一つあります。
それはピアノやキーボードなどの鍵盤楽器を用意してほしいことです。
鍵盤楽器は見た目でも分かるように、ドレミファソラシドがそのまま音階として現れているので理解しやすく、あなた自身も音を出すことで、よりその手助けとなってくれます。
もし、ご自宅に鍵盤楽器があればそれを使って(楽器持っている人がこの記事を見てはいないだろうけどw)、なければスマホなどにピアノ系のアプリを入れて確認してもらえるときっと捗ると思います。
PCブラウザでご覧いただいている方には、マウスで弾けるキーボードのサイトをリンクしておきます。
さて、音楽知識についてほとんど疎い方は、ドレミファソラシドと言ったら白い鍵盤(白鍵)だけをイメージすることになるはずです。
確かにドレミファソラシドという名前だけで捉えてしまえば、白鍵だけを押さえることでその音階は完成するので決して間違っているわけではありません。
ところが、このドレミファソラシドという音階、つまり音の響きは一つだけではなく複数あります。
それは、実はどの鍵盤からも同じようなドレミファソラシドという音階の響きを作り出せるようになっているからです。
例えば、鍵盤の『ド』からならあなたも知っている白鍵のドレミファソラシドの音階になりますが、これを大きくずらして『ソ』の位置から始めてみたとしましょう。
『ド〜ド』までの鍵盤を数えると8つなので、この場合も同じように8つである『ソ〜ソ』、つまり『ソ,ラ,シ,ド,レ,ミ,ファ,ソ』と押さえることになります。
では早速、スマホのアプリか上記のキーボードサイトで鍵盤を弾いて音を確認してみましょう。
あれ?何だか変じゃない?と思った方は正解。
確かにこのままの音階だと、ドレミファソラシドに近い音階まで来ていることが分かりますが、最後の音だけちょっとだけずれているように感じます。
では、このズレを正してあげましょう。
最後のファを鍵盤一つ分右にずらして、隣の黒鍵に代えて弾いてみます。
するとどうでしょう。
綺麗にドレミファソラシドと同じ音階を作ることができたと思います。
この音階を1音ずつ確認してみると、始まりはソで『ソ,ラ,シ,ド,レ,ミ,ファ♯,ソ』となりました。
最後のファが白鍵ではなく、黒鍵のファ♯(シャープ)に変わっていることに注目しましょう。
さらに、別の鍵盤からもドレミファソラシドを作ってみましょう。
次は、『ファ』からスタートさせて『ファ,ソ,ラ,シ,ド,レ,ミ,ファ』と弾いてみます。
やはりこれも何だか変に聞こえます。
そこで、『シ』をシ♭(フラット)に代えて『ファ,ソ,ラ,シ♭,ド,レ,ミ,ファ』と弾いてみます。
すると、ファからスタートしても綺麗にドレミファソラシドの音階が作れました。
このように白鍵と黒鍵を組み合わせることで、どの場所からでもドレミファソラシドの音階は作れるのです。
そして、このどの場所からでも音階になることを『調』という言葉で表すようにし、それらに名前を付けたものを『ハ長調』などと呼んでいるのです。
♯と♭という『半音』を表す要素
もしかしたら色々と疑問が浮かんできているかもしれませんが、それはこのまま続けていく中で解消していくと思います。
では、一つ大事な要素である♯(シャープ)と♭(フラット)について詳しく見ていきましょう。
先ほど、ソから始めた音階には♯が、ファから始めた音階には♭が一つだけ付きました。
確認ですが、ソから始めた音階には『ファ♯』となり、ファから始めた音階は『シ♭』になりましたね。
まず、この『♯(シャープ)』という記号は、その音を半音上げるという意味になります。
例えば、『ド』を半音上げるのであれば、ドのすぐ右隣の黒鍵が半音上げたドであり、『ド♯』になります。
『レ』であれば、レの右隣の黒鍵が半音上げたレであり、『レ♯』です。
では、『ミ』で考えてみるとどうでしょう。
今まで半音上げる音には黒鍵を使ってきました。
しかし、あなたも気付いたようにミの右隣には黒鍵がありません。
隣に黒鍵がない場合は、音を半音上げることはできないのでしょうか?
いいえ、もちろん可能です。
『ミ』を半音上げた音は『ファ』そのものになります。
白鍵が隣り合っている場合は、その隣の音が半音という単位になるわけです。
同様に『シ』の隣は『ド』ですが、この音の差も半音という単位の関係にあたります。
そうなってくると、例えばレ♯の半音高い音はどれに当たるのか?と気になってくるかもしれません。
その場合は隣同士の鍵盤(ここでは黒鍵から白鍵という間隔)を見て『ミ』が半音高いことになります。
一方、半音を高くすることもあれば、反対に半音を低くする場合も当然あります。
その場合は、♭(フラット)という記号を用いることで、半音を下げる意味として使われることになります。
前述の音階、ファから始まる音階を調べた際にはシがシ♭になりましたよね。
つまり、シの半音下がった音という意味であり、鍵盤は♯とは逆の位置の左側に移るようになります。
他の例えを出すと、『ド』の半音下げた音は『シ』であり、『ラ』の半音下げた音は『ラ♭』、『ソ♭』の半音下げた音は『ファ』になるわけです。
難しくはないですよね。
つまり、ここでの♯と♭をまとめると、どこの鍵盤を見た場合でも、すぐ隣の鍵盤が『半音』という位置関係になっており、音を高くするなら♯、低くするなら♭という記号を用いるというわけです。
半音があれば、それすなわち全音も存在する
♯と♭で半音を上げたり、下げたりできることが分かりました。
次はそう、音階を語る上でもう一つ重要な要素である、『全音』です。
全音は『半音+半音』を表し、半音と同じように音階を数える上で必要な考え方になります。
まぁ半音+半音なので、すぐに察しがつくとは思いますが、『ド』と『レ』の関係や『ソ』と『ラ』のような関係になります。
これらを分解すると…
- 『ド』と『レ』の間には、ド♯(半音)があり、そしてレ(半音)がある
- 『ソ』と『ラ』の間には、ソ♯(半音)があり、そしてラ(半音)がある
分かりますよね?
では、『ミ』の全音高い音とはどれになるのでしょうか?
答えは『ファ♯』です。
こちらも大丈夫ですよね?
ミの隣はファがあり、それが半音、さらに半音高くするのですから、ファ♯となるわけです。
一方、『ド♯』の全音低い音と言われたら、『シ』ということです。
半音と全音、これで両方理解できたかと思います。
基礎の基礎ではありますが、半音と全音、♯と♭については音楽を学ぶ上で絶対に避けられないものなので、確実に覚えておきましょう。
音階の並び方には順序がある
半音と全音を覚えたということは、あなたはここから大きな飛躍をすることになります。
なんと、これらを覚えたことにより音階の並び方を知ることができるようになるからです。
まずは、白鍵だけの『ドレミファソラシド』で考えてみましょう。
この音階の中で全音と半音になっている箇所を抜き出してみます。
- 全音の関係性=ドとレ、レとミ、ファとソ、ソとラ、ラとシ
- 半音の関係性=ミとファ、シとド
つまり、全音の関係性は『5つ』で、半音の関係性は『2つ』ですね。
順番に並べて読んでいくと、『全音・全音・半音・全音・全音・全音・半音』という順番になっています。
実は、この関係性こそが『ドレミファソラシド』と聞こえる大元の音程であり、音階の土台となる重要な要素になっているのです。
この『全音・全音・半音・全音・全音・全音・半音』は、音階を知る上で絶対に必要なので、今のうちにさっさと覚えてしまいましょう。
覚え方は『全、全、半、全、全、全、半』と略してしまい、念仏のように何回も唱えるだけです。
おそらくそれだけで、すぐに頭に思い浮かべられるようになるはずです。
音階の並び方を知ることとは?
音階には、全音と半音が組み合わさっていることがこれで理解できたでしょう。
では、今回の核心に迫っていきます。
前述で、どの場所からもドレミファソラシドの音階が作れると書きました。
それをここから実践していきます。
もう察しがついているとは思いますが、要は、『全音・全音・半音・全音・全音・全音・半音』が音階の鍵であり土台であるわけですから、これを各音に当てはめて音階を作ってしまえばいいのです。
既に上記で行った、白鍵のみである『ドレミファソラシド』を見てみると、ドからドまでの間は『全音、全音、半音、全音、全音、全音、半音』となっていました。
では早速、比較的分かりやすい、『ソ』から始めてみます。
ソから始めて、ドレミファソラシドと同じように聞こえる音階は、『ソ,ラ,シ,ド,レ,ミ,ファ♯,ソ』でした。
この音階を紐解いてみましょう。
『全、全、半、全、全、全、半』になっているかどうか、数えてみてください。
どうでしょう?
正に『全音、全音、半音、全音、全音、全音、半音』となっていることが分かりますね。
次はファから始めたドレミファソラシドです。
音階は『ファ,ソ,ラ,シ♭,ド,レ,ミ,ファ』でした。
この音階も紐解くと、やはり『全音、全音、半音、全音、全音、全音、半音』になっています。
さらに、次はミの音で試してみます。
ミから『全、全、半、全、全、全、半』の並びを当てはめてみます。
すると、『ミ、ファ♯、ソ♯、ラ、シ、ド♯、レ♯、ミ』となり、つまり、これがミの音階というわけです。
なんだか鳥肌が立ってきませんか?
さぁ、あとはこの『全、全、半、全、全、全、半』を全ての鍵盤に当てはめていけば、全ての音階が生まれることになります。
調の名前を覚えることももう簡単!
音階を作れるようになった以上、これらがどの音階になのかを差別化するための呼び方が必要になります。
日本ではこれを調という言葉で用いています。
調には長調と短調がありますが、今回の内容は長調のみだったので、まずは長調だけを載せておきます。
あと、『♯』のことを日本語に直すと『嬰(えい)』と呼び、『♭』のことを『変』と呼ぶので、この際、併せて覚えちゃった方が楽ですw
- ハ長調 – ド
- ニ長調 – レ
- ホ長調 – ミ
- へ長調 – ファ
- ト長調 – ソ
- イ長調 – ラ
- ロ長調 – シ
- 変(♭)ニ長調 – レ♭
- 変(♭)ホ長調 – ミ♭
- 変(♭)ト長調 – ソ♭ = 嬰(♯)へ長調 – ファ♯
- 変(♭)イ長調 – ラ♭
- 変(♭)ロ長調 – シ♭
と、合計12でこのようになりますが、これだけだとどれがどの音階かは分からないですよね。
なので、以下に英語名も付けて全体をまとめました。
つまり、これで12の音階と読み方全てが完成したことになります。
何というか壮観ですよね。
これらをこのまま全て覚えようとするのも構わないのですが、それよりももう、あなたは鍵盤を数えることができるはずなので、そこから導き出した方が分かりやすいかと思います。
『全、全、半、全、全、全、半』と唱えることを繰り返しながら、自然と身につけていってください。
まとめ
さて、半音、全音、音階など色々と分かっていただけたと思います。
上記で繰り返した『全、全、半、全、全、全、半』は、いたって初歩的ですが、知らないと知っているでは雲泥の差があります。
覚えてしまえば超簡単なので、あとはこれを元に音階を作っていくだけです。
今あなたはスッキリした気分で悦に浸っていると思います。
思いますが、あえてここで水を差すようなことをします。
上記の中で、今回は長調だけと言ったように、短調があることを忘れてはいけませんw
【音楽基礎知識】DJも知っておこう!音階と調について<短音階編>