映画『マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙』に見る、女性初のイギリス首相とは?

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はじめに

今回は2011年公開(日本:2012年)の映画『マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙』について考察してみました。

この映画は、政治家である『マーガレット・サッチャー』を女優メリル・ストリープが熱演をした作品です。

映画の評価としてはメリル・ストリープがアカデミー賞で主演女優賞を受賞しています。

さて、この記事では映画『マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙』を自分なりにレビュー・解説しています。

独自に『マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙』を考察しているので、この記事と合わせて見てもらえば、より深く作品を味わうことができるでしょう。

この映画は、イギリス初の女性首相がどのように当時の政治をおこなってきたかが分かる作品になっています。

レビュー・解説にあたって

当ブログの映画ページでは、映画の魅力をより伝えられるように、私の視点で映画の中身について語っています。(ネタバレ含みますのでご注意を!)

例えばこのシーンを見ると、より感情的な配慮があったり、技術的に訴えているなどの意味合いなど、細かい部分などにあたります。

もし、お手元に映画があるなら一緒に見てもらえると、より分かりやすいと思います。

それでは始めて行きます!

映画の概要

スタッフ/キャスト

  • 監督:フィリダ・ロイド
  • 脚本:アビ・モーガン
  • 出演:メリル・ストリープ、ジム・ブロードベント、オリヴィア・コールマン
  • 音楽:トーマス・ニューマン
  • 撮影:エリオット・デイヴィス
  • 編集:ジャスティン・ライト
  • 公開:2011年(日本:2012年)

あらすじ

食料品兼雑貨店の娘マーガレット・ロバーツは、市長を務めた父親の教えに従い、自らも議員人生を歩み始めた。

オープニングで虜になったらあとは面白い!

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『マーガレット・サッチャー』もまた、昨今のドキュメンタリー映画と同様に観客に受け入れやすい映画にされています。

彼女がどのような人物だったかを、政治手腕を含め当時のイギリスの状況と合わせながら見れるような作品になっているからです。

マーガレット・サッチャーと聞くと、ガチガチの政治ドキュメンタリーではないかと考えるところですが、やはりそこは大衆映画にされています。

そして、その受け入れやすさは主にオープニングから始まっています。

政界から離れたとは言え、年老いた元首相であるマーガレット・サッチャーが、自ら食料品店に買い出しに行くのです。

そして、その後マーガレットの夫であるデニスと食事をするのですが、観客はその様子がおかしいことに気づかされます。

それは、マーガレット・サッチャーが見ている夫のデニスが幻覚であり、マーガレットが認知症であることが分かるからです。

こうしたオープニングで、観客は「おや?」と思わされることになるわけです。

最近のドキュメンタリー映画での常套手段ですが、上手い冒頭だと言えます。

いきなり確信(ここでは政治)の話から入るのではなく、年老いたマーガレット・サッチャーが今現在どのように生活しているのか。

それもただ生活しているだけでなく、認知症を患い幻覚の症状も出ていることで、これから物語がどのように進むのか。

これらを観客は考えさせられるわけです。

このオープニングで心を摑まされたなら、あなたは、すぐにこの映画が「面白そうだ!」と思えたのではないでしょうか?

分かりやすい政治人生と人格の見せ方

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映画『マーガレット・サッチャー』は、実在した故・マーガレット・サッチャーの自伝的映画です。

サッチャーはイギリスの政治家であり、女性初の元首相です。

政治的意見は除外しても明らかに偉業を成し遂げた人物と言えます。

食料品店の生まれでオックスフォード大学の出身、弁護士資格を持ち、英国下院議員から始まり、教育大臣を歴任。

そして保守党代表を経て英国首相の地位まで昇りつめます。

首相時代は様々な英国の問題にムチを入れて改革を実行していきます。

そして、犠牲を伴いながらもフォークランド紛争を成功させたあと、最終的にはその地位が失脚することになっていきます。

こんなことを言っては失礼にあたるかもしれませんが、彼女の政治人生そのものがドラマチックな流れになっているのです。

つまり、政治の話があまり好きではない観客にも、興味を持って見させられる題材だと言えるわけです。

また、マーガレット・サッチャーの人格や性格を、政治より前面に押し出している点も印象強いです。

サッチャーがどのように考え、行動し、それを実際に結実させていったかが分かりやすいものになっています。

年老いたサッチャーであっても、言葉の隅々に力があることが垣間見れますしね。

とは言え、彼女の人生をわずか2時間に収めているので、あまりにもかいつまんだ内容になっているのも事実です。

本当のマーガレット・サッチャーを知るには全く時間が足りないですし、誤解を生みやすいものにもなっているでしょう。

また、家族との生活模様がほとんど描かれていないので、その部分がどうだったかはとても気になるところです。

裏のテーマは恋愛映画でもある

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この映画は政治の話でもありますが、物語の多くはマーガレットとデニスの恋愛模様であり、政治家夫婦の恋愛映画だとも言えます。

お分かりのように、二人のラブロマンスが映画の骨格として使われているからです。

この映画の二人はお互いに理解があり、尊重し合っています。

喧嘩をしても、それは相手をけなし合うことではなく、家族への思いのズレくらいでした。

二人は晩年になっても仲睦まじく、誰もが憧れるような関係性を維持できていたのです。

どうしてこのように、ある意味恋愛映画の側面を強く打ち出したのでしょうか?

これは、マーガレットが夫の幻覚を見ていたからに他なりません。

つまり作り手はその幻覚を逆手に取ることにしたわけです。

主人公はマーガレットです。

そのマーガレットは若かりし日の女性ではなく、晩年を生きるマーガレットを主人公にしています。

介護は必要なさそうですが、弱々しい姿には変わりありません。

そして、そんなマーガレットにはもはや心通わせる相手はおらず、生活上では孤立している状態と言えます。

つまり、晩年のマーガレットには映画における明確な対話相手がいないのです。

そこで、作り手は幻覚を利用したというわけです。

幻覚と会話をさせるようにすれば対話相手が生まれます。

しかもそれが夫であれば、なおさらこの女性首相の物語を作る上で都合が良いというわけです。

マーガレットと夫を対話させれば恋愛要素を強くできるからです。

恋愛要素が強ければ、そういったアプローチからも観客にアピールできます。

当の脚本家が、サッチャーが幻覚を見る症状を聞いてから本を書き始めたかは分かりません。

しかし、上手く利用できる(むしろそれをメインに)と考えたのは確かなはずです。

晩年のマーガレットと血気盛んなマーガレットを描いたカットバック

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映画『マーガレット・サッチャー』は、見て分かるように現代と過去のカットバック映像をメインに進んでいきます。

それは父親との歩みからデニスとの出会い、そして首相時代までを段階的にです。

そして使われている編集手法の一つとして、ドキュメンタリー映像で多く使われる『コラージュ』も多用されています。

コラージュの元素材は、過去イギリスで起こった事件や政治的関心ごとによる実際の報道映像です。

こうして過去の映像を上手く盛り込み、サッチャーの政治手腕と重ね合わせるように映すことで、当時のイギリスがどのような政治的局面に遭遇してきたかも、何となくですが分かるようになっています。

中盤以降はそのコラージュ映像もどんどん増えていき、テンポを早めて行きます。

映画のスピードアップとともに時代の移り変わりが早くなっていくことに合わせているわけです。

また、基本的にインドアな映画でもあるので、コラージュそのものが場面転換として機能するようにされています。

映画としての中だるみが起きないように工夫されているわけですね。

まとめ

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マーガレット・サッチャーは自分の意思を貫くことだけで政治人生を歩むことができました。

政治思想は脇に置いておいて、そんなサッチャーには学ぶべきところも多いと言えます。

この映画を見て政治家に憧れを持つ方もいるかもしれませんね。

最後に。

この映画でサッチャーが下院議員になった際、サッチャーは走る幻覚の子供たちを追っていました。

その時、彼女は廊下の突き当たりを『左側』に歩いて行きました。

うって変わって、デニスとの幻覚から別れた次の日は反対に『右側』を歩いて行きました。

これは政治的な『右』、『左』ではなく、おそらく晩年になっても政治的考えを失わないマーガレット・サッチャーの新しい始まりを、最後に対比として見せたかったんだと思います。