はじめに
今回は、基本的な『サーバーとパソコンの違いは何?』という疑問について解説していきます。
ただその前に、この疑問について極論してしまうと『サーバーとパソコンの違いについては考えなくていい』というのが実は答えになってしまいます。
なんていうか身も蓋もない話ですが、しかし上記の理由が妥当なのは事実です。
『サーバー』と『PC』のハードウェア構成は基本的に変わらない
あなたは、サーバーはパソコンよりも何か特別なコンピューターだと思っていないでしょうか?
なかなかサーバーというものにお目にかかることがないので、そういうイメージを持ってしまうのは仕方がありませんよね。
私もサーバーはとにかくすごいものだと勝手に思っていた時期がありました。
確かに、今ではサーバーのスペックを見ると、メモリが64GBなどとPCよりもはるかに高い数値で記載されているので、何だか色々なことが余裕でできそうな気がします。
しかし、その考えは時期尚早であることが実は分かってきます。
ここで、一旦サーバーとパソコンのハードウェア(中身)がどう構成されているのかを見ていきましょう。
まず、サーバーもPCも基本的なハードウェア構成は同じです。
どちらも蓋を開けてみると、共通する『マザーボード』『CPU』『HDD(SSD)』『メモリー』という4つの主要パーツから構成されています。
『マザーボード』は、人間の体で言うと筋肉や神経のようなもので、各パーツを相互に連携させるための基盤組織です。
『CPU(Central Processing
Unit)』は中央処理装置であり、処理のための命令を各部に伝達したり、ありとあらゆる複雑な計算をおこなう頭脳を司っています。
『HDD(Hard Disk
Drive)』は、長期記憶装置で、メモリーには収まりきれない大量の情報を保存しておきます。
最近では『SSD(Solid State Drive)』というHDDよりも読み書きの速度が速いドライブも主流になってきています
『メモリー』は一時的な記憶装置で、HDDやSSDの情報を読み出したり書き込んだりするする場所です。
このように、サーバーとPCのハードウェアをパーツ単体で見ていくとほぼ共通しているので、特にハードウェア的な違いはないと言えます。
ちなみに、あなたも気づいたかもしれませんが、サーバーのハードウェアにはグラフィックカードやサウンドカードなどは搭載されていません。
その理由は、それらの要素が必要なのは繋がっているクライアント(端末)であり、サーバーには必要ないハードウェアだからです。
『サーバー』に求められるもの
ここまで読んで来るとあなたは、「だったら普通のPCでもサーバーの代用になるのか?」と考えますよね。
確かに、サーバーとPCのハードウェア構成が同じなら、代用も問題なさそうです。
ところが、個人で使用することを前提で構築したサーバーでない限り、これはそうもいきません。
その理由は、そもそもサーバーはサービスを提供することを目的としたコンピューターだからです。
サーバーはたった1人の個人が使うのではなく、複数のユーザーが同時に使うことが前提になります。
しかも、それだけでなく24時間連続稼働が求められるものです。
クライアントがアクセスして、サーバーに使えない時間があるのであれば、それはサービスを提供しているサーバーとは言えません。
また、保存されるデータの消失は許されず、セキュリティーに関しては高いレベルのものが要求されます。
こうしたことを考慮すると、必然的にサーバーとして求められるものが生まれてきます。
それは、『耐久性』『安定稼働』『セキュリティー対策』などです。
『耐久性』は、多くのクライアントからのアクセスがあっても問題なく稼働できることです。
もし、あまりにもアクセスが多い場合は、アクセスを分散させるための措置なども講じる必要があります。
『安定稼働』は、やはり24時間連続稼働を実現するためとデータの保存対策になります。
これには電源部分の装備とデータバックアップのためのRAIDという仕組みを利用することになってきます。
『セキュリティー対策』は、外部からの攻撃や情報漏洩にどう対応するかというものです。
そのためには、ルーターだけでなくファイアウォール専用のサーバーなど、外部からの侵入を防ぐ装備が必要になります。
こうして、サーバーにはサービスに応じた装備が必要になるので、そのスペックやグレードが一般のPCよりも高いものになってくるのです。
つまり、そこまで耐久性や安定稼働を獲得できないPCでは、残念ながらサーバーの代用にはならなことが分かります。
サーバーに求められる要素
- 耐久性
- 安定稼働
- セキュリティー対策
サーバーは結局、人の『サービス』の為のコンピューターである
ハードウェアとして見た場合、サーバーの代用にPCが使えないことは分かりました。
次に、ソフトウェアでも見ていきましょう。
サーバーで使われるOSは、一般のWindowsやMacOSが使われることはありません。
WindowsはWindowsでも『WindowsServer』という専用のOSだったり、『Linux』というOSが使われます。
そして、これらのOSでは普段あなたがPCでおこなっていることはほぼできません。
サーバーOS自体がそういった仕様になっていないのはもちろんのこと、アプリの方もサーバーOSには対応していないからです。
また、サーバーの用途は基本的に1台で1つの機能で構築されるものであり、あなたが使用しているPCの方がサーバーよりもよっぽどできることは多くなります。
繰り返しますが、結局サーバーは『人々』にサービスを提供するコンピューターという括りでしかないのです。
これを突き詰めると、サーバーへの考え方も変わってきます。
その例として、若干脱線しますが『NAS(Network Attached Storage)』というストレージを考えてみます。
NASはファイルサーバーの1種でありファイル共有が可能なハードウェアです。
しかし、サーバー構築のような複雑な作業は必要なく、購入してすぐに使えるものであり、尚且つ、その価格は家庭内でも使えるような数万円という安価になっています。
また、他にも『プリンタサーバー』はプリンタにすでに組み込まれており、こちらもクライアントとの設定さえすませばすぐに利用ができます。
このように、サービスという括りで考えれば、もはやサーバーとPCは比較するべき対象ではないことが分かります。
まとめ
サーバーとPCの違いについての疑問は、あまり考える必要がありません。
サーバーはサーバー、PCはPCとして別のものとして考えていいでしょう。
それよりも、サーバーを構築する際には、そのスペックや装備で『いかに正常なサービスが提供できるか』ということを考えることになってきます。